松浦美世
4月から始まった総合事業※1について、ある利用者さんの支援を通じてケアマネジャーとしての自分の非力さといいしれぬ無力感を感じた出来事を、本人と家族の了解を得てここにお伝えします。Aさん(95歳女性、要支援2)は圧迫骨折とひどい外反母趾のため外では杖や歩行器を使っています。3年前に夫が要介護となり(現在は要介護2)、介護負担からめまいが出て週1回の点滴治療を続けつつ、夫と二人暮らしのため家事を行っています。
このAさんに総合事業への移行に向けて私がケアマネジメント会議※2に出した申し出は、「高齢でもあり、心身機能(認知機能)の低下は認めざる得ない現実であり、できる限り今の生活をつづけていきたいという本人の意思を尊重し、その生活を支援するために専門性の高いヘルパーによる現在と同じ程度の生活支援のサービスを希望する」という内容でした。
それに対する答えは「認知症の進行を予防するため、訪問リハビリにより、本人の能力を評価し、これをふまえてプログラムを立て、実行してもらう必要がある。リハ職(理学療法士など)の立てたプログラムを数か月実行したのち、専門職の訪問介護スタッフに引継ぎを行う。」というものでした。
これをAさんに伝えると「認知症の進行を予防するプログラムがどんなものかわからないが、年を取ってだんだんと衰えてきていることは感じているし、娘には負担をかけたくないのでまたヘルパーさんの手助けを受けたい。そのために訪問リハビリを利用してみようと思う」と言われ、訪問リハビリの利用が始まりました。
そのプログラムでは、冷蔵庫の在庫と生協への発注のリストを毎週パソコンで作りました。衰えの目立つ下肢筋力の維持回復のためにスクワットと負荷をかけての膝の屈伸などに数週間取り組んだところ、ある日膝関節に激しい痛みが走り、本人は立ち上がりにも苦労するようになりました。整形外科で膝関節炎と診断されました。
連絡を受けて訪問すると、1週間ほど前から1日1回ほど吐くこともあるとのこと。本人によく話を聞いてみると「どう考えてもリハビリが痛みの原因になっていると思う。リスト作りも久しぶりにパソコンを使ったのは良かったけれど、負担になった」とのことでした。私は大急ぎで自宅内で使う歩行器を手配し、本人と家族の希望で訪問リハビリを中止しました。残念ながら訪問介護に引き継ぐところまでにはいたらなかったのです。
娘様からは「高齢になっても現役の主婦としてがんばりすぎるくらいがんばっている母にさらに重い負担をかけてかわいそうなことをした」との言葉を聞き、心から申し訳なく思いました。みなさんはこの出来事をどのように思われるでしょうか。
※1 総合事業・・・全国一律だった要支援者(介護予防)の訪問介護と通所介護が、市町村の裁量で行う「介護予防・日常生活支援総合事業」となった。
※2 ケアマネジメント会議・・・市・地域包括支援センターの主任介護支援専門員、リハビリ職等で構成され、多職種の専門的見地から検討を行う会議のこと。
赤シソの寄付をお申し出頂いて、畑へ行って収穫しました。刈り採った赤シソは、風和のみんなで葉をむしって取りました。赤シソは、福島原発事故被災者へ梅干しを贈るプロジェクトに寄付し、また一部はジュースにしてみんなで頂きました。
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● | ふうわなくらし104 臨床美術 | 向井千尋 |
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